通勤中、なぜか急に吐き気がしたり、体調不良を感じることはありませんか?これは、体があなたに発しているストレスサインかもしれません。
気のせいかもしれないと思って放置すると、不調が慢性化し、さらなる健康問題を引き起こしかねません。早めの対処が重要です。
そこでこの記事では、ストレスマネジメントの著書を持つ心理カウンセラーが「セルフケアを通じてストレスを可視化し、少しずつ心と体を楽にする方法」を紹介します。
ストレスによる体調不良を無視せず、あなたの大事な体と心を守るための方法を見つけましょう。
目次
通勤中に吐き気が出るおもな原因
なぜ通勤中に吐き気がするのでしょうか?健康心理学的な視点から、おもな原因を把握しましょう。
自律神経の乱れによる身体反応
1つ目は「自律神経の乱れによる身体的な反応」によるものです。
・ぎゅうぎゅうに混んだ電車内
・汗や香水のにおいが充満する電車内
・頻発する人身事故や車内点検
・遅刻するわけにいかないプレッシャー など
通勤中のストレスは、交感神経と副交感神経のバランスを崩す大きな原因となります。特に、満員電車や渋滞に巻き込まれる環境では、緊張感や不安が高まって、交感神経が過度に刺激されます。
この結果、心拍数や血圧が上昇し、胃腸などの消化器官の働きが低下して、吐き気や胃の不快感を引き起こします。
これは「自律神経失調症」の一部として現れることがあり、ストレスに敏感な人ほど症状が顕著です。
また、満員電車や渋滞により、物理的な不快感も吐き気を引き起こすことがあります。息苦しさや閉塞感、長時間同じ姿勢でいることによる血流の悪化などが原因となり、吐き気やめまいが発生します。
車やバスで通勤している人は「乗り物酔い」が吐き気の原因になることもあります。
心理的な要因によるストレス反応
2つ目は「心理的な要因によるストレス反応(心因性)」によるものです。
・上司が怖い/苦手
・お局様から嫌がらせを受けている
・仕事が覚えられない/ミスを連発している
・重大な仕事を任されている/プレッシャーがある
・職場に馴染めない/社風が合わない など
仕事へのプレッシャーや人間関係の悩みが心理的なストレスとなり、通勤時に心身に影響を与えることがあります。
通勤が始まる時間になると、体が無意識に仕事のストレスを予期し、それが吐き気や腹痛といった身体反応として表れるのです。
特に、心因性のストレスは、仕事のことを考えるだけで体が反応するため、電車に乗る前や車を運転中などの通勤途中などに症状が出ることが多いです。
1つ事例を紹介します。
Hさんは通勤時に電車に乗ろうとすると急激に吐き気をもよおすため、しだいに遅刻や欠勤が増える状況に悩み、カウンセリングにお越しになりました。
話を聞くと、職場では上司が怒鳴ることも多く、しだいに「出勤したくない」感情が高まり、生理的な反応として吐き気が起こっているようでした。
そこで、カウンセリング中にHさんは呼吸法をはじめとしたセルフケア法を身に付けることに。複数のセルフケア方法をマスターするころには、通勤中の吐き気も緩和され、当日欠勤も減っていきました。
ストレスを可視化するためのセルフケア方法
原因が見えたところで、続いて取り組みたいのは「可視化」です。ストレスは目に見えません。
だからこそ知らず知らずのうちに蓄積し、限界を超えて、吐き気や腹痛、頭痛やめまい、下痢などの反応として表れます。ストレスが限界量を超えないためにも、あなたのストレスパターン等を自覚することは不可欠です。
そこで、可視化するための方法を3つ紹介します。
心身ノート
1つ目は「心身ノート」です。
毎日、通勤時に感じたストレスや体の反応(吐き気、緊張、めまいなど)を日記として書き出すことを推奨します。
・どんなときに吐き気がしたのか?
・どのくらいの症状か?
・ほかにどのような身体的な反応があったのか? など
書き方の例)山手線のホームに着いたときに、胃液が急にこみ上げるような吐き気がして、お腹も痛くて下痢しそうな感覚がある。
毎日書くことで、しだいにストレスを感じるときのパターンが見え、記録の蓄積とともにあなたのストレスパターンを把握することに役立ちます。
デトックスノート
2つ目は「デトックスノート」です。
通勤中に湧き上がる感情(不安、恐れ、焦りなど)を日記に記録し、どのような状況で感情が強まるのかを把握しましょう。
書き方の例1)山手線のホームに着いたら「これから仕事だ」と、今日の仕事がよぎった。すると、上司の怒鳴り声や同僚がくすくす笑う声が蘇り、怖い、不安だ、行きたくない、との感情が湧いてきた。
書き方の例2)最寄り駅に着いたら、「今日のプレゼン、絶対に成功させなきゃ」「次失敗したらヤバい」と焦りが湧いてきて、動悸と吐き気が同時にこみあげてきた。
デトックスノートをつけることで、自分の気持ちを客観的に見つめることができます。日常の中で感情の波を俯瞰し、ストレスと向き合う準備が整うでしょう。
ストレスレベルのセルフチェック
3つ目は「ストレスレベルのセルフチェック」です。
身体面、感情面を書いたら、続いて自分のストレスレベルを1週間ごとにセルフチェックしましょう。
やり方はかんたんです。ストレスの感じ方を0~10で書くだけです。全然ストレスを感じていない状況が0、ストレスフルな状況が10だとしたら、今日の通勤時のストレスがどの程度だったのか、を記録します。
書き方の例:最寄り駅に着いたら、「今日のプレゼン、絶対に成功させなきゃ」「次失敗したらヤバい」と焦りが湧いてきて、動悸と吐き気が同時にこみあげてきた。ストレス度:9
記録をすることで、どの程度ストレスを感じているのか、ストレスが溜まりやすい時期や環境は何か、などを特定しやすくなり、対処しやすくなります。
今日から実践できるストレス対処法:セルフケアの具体例
セルフチェックができたら、続いてストレスへの対処法です。ここでは、今日からでも実践可能な健康心理学的な対処法をご紹介します。
呼吸法
1つ目は「呼吸法」です。
通勤中の吐き気や腹痛、頭痛や下痢などは、ストレスに伴う自律神経系の乱れによるものが多いです。高まった交感神経を落ち着けるために、呼吸法を行いましょう。
気軽にできるものとして「腹式呼吸法」があります。やり方はシンプルです。
お腹に手を当てて、お腹から7~8秒かけてゆっくりと息を吐きます。息を吐ききったら、7~8秒かけてゆっくり息を吸います。この際に、お腹に息が入るイメージで行いましょう。
3回ほど繰り返すころには、副交感神経が高まり、緊張感が和らぎます。毎日練習をして、ストレスを感じたときにできるようにしましょう。
マインドフルネス
2つ目は「マインドフルネス」です。
吐き気や頭痛などのストレス反応が出ているとき、あなたの意識は「今ここ」に向いていますか?
・明日のプレゼンが失敗したらどうしよう?
・テキパキしないと(このあと)上司に叱られるかもしれない
・お局様や先輩がまたいじわるを言ってくるかも など
過去の失敗体験やトラウマ、あるいは未来に起こるかもしれない不安や心配事に目を向け、よけいにストレスを感じているかもしれません。
そこで、「今この瞬間」に意識を向けてみてください。ゆっくり息を吸い、ゆっくりと息を吐きながら、過去の出来事や未来の不安から心を解放します。
もし雑念が浮かんできても、それを否定する必要がありません。その事実をただ受け流し、再び呼吸に意識を戻しましょう。
マインドフルネスを続けることで「今ここ」に意識を向け、心の安定を図ることにつながります。
カウンセリングやセラピーを活用する3つのメリット
「これらのセルフケアを試してみたけれど、なかなか改善しない…」と感じたときには、カウンセリングやセラピーを検討してみてください。なぜなら2つのメリットがあるからです。
客観的な立場からのサポートが得られるから
1つ目は「客観的な立場からのサポートが得られるから」です。
セルフケアを行っていても、自分事の悩みのため主観的に考え、視野が狭くなってしまうことがあります。
カウンセラーは第三者だからこそ、客観的な立場であなたの感情を整理し、ストレスの原因を見つけるサポートを行います。
実際にカウンセリングをすることで「通勤時の腹痛の原因は、体が弱いのではなく、職場環境のストレスだったんですね」と自覚され、本当の原因を見つけてほっとされる方もたくさんいます。
共感や受容による癒し効果があるから
2つ目は「共感や受容による癒し効果があるから」です。
職場環境が劣悪であったり、合わなかったりすると、通勤によるストレスは相当なものになります。呼吸法等で気持ちを落ち着けても、ネガティブ感情が治まらないこともあるでしょう。
傾聴のトレーニングを受けたプロのカウンセラーに「うん、うん」「○○で辛かったんですね」と、受容や共感をしてもらいながら話を聴いてもらうことで、心につかえたままのネガティブな感情が徐々に浄化されていきます。
Rさんは、通勤時に頻発する胃痛や吐き気が職場ストレスによるものだ、とうすうす気づいていました。
しかしカウンセリングでひたすら受容されることで、「上司が怖いと認めてもいい」「出勤が嫌だと感じていい」と自分に許可が出せるようになり、体の余分な力が抜けていきました。
それにともなって出勤時の不調も緩和されました。このように、カウンセリングには人を癒し、回復させる力を秘めているのです。
専門家による効果的なアプローチが受けられるから
3つ目は「専門家による効果的なアプローチが受けられるから」です。
通勤中の吐き気は、現在進行形の職場のストレスだけでなく、幼少期のいじめや養育環境によるトラウマが絡んでいることもあります。
その場合には、自力でのセルフケアでは限界が来ることも少なくありません。
実際に私がカウンセリングした方の中にも、現在の職場での問題はあったものの、カウンセリング回数を重ねると、相談者の子どものときの記憶と結びついたことがあります。
「ミスをすると無視される」「周りの評価に答えないと、誰も相手にしてくれない」などと感じる思考グセが見つかったため、過去のトラウマに対してフォーカスを当てた心理ケアを施した結果、相談者を悩ませていた心身の不調も徐々に緩和しました。
このように根が深いケースなどは、専門家によるカウンセリングが非常に有効です。
ストレスの表れ方や悩み別の対処法については、著書「こころの予防医学」に書いています。
会社員の通勤や職場ストレスでの対処法についてくわしく知りたい人は、【会社員向け:ストレスマネジメント入門コース】で解説しています。
そのコースでは、ストレスを可視化するセルフチェックや、効果的なストレスコーピングの実践法もご紹介していますので、日常でのストレス管理にぜひ役立ててください。
受講者限定の特典として、ストレスチェックシートやセルフケアワークシートも提供していますよ。
通勤時の吐き気は心身のSOS!セルフケア等で軽減しよう
通勤中に起こる吐き気や急な体調不良は、心と体からのSOSサインです。これぐらい大丈夫だ、と高をくくっていると無理がたたって、症状の悪化や慢性化を招きかねません。
これらのストレス反応を放置せず、セルフケアやマインドフルネスを取り入れることで、少しずつ改善していくことが可能です。
デトックスノートや心身ノート、ストレスチェックなどを日常生活に取り入れることで、あなた自身のストレスパターンを把握することができます。心身のバランスを整え、ストレスを軽減していきましょう。
もし、さらに詳しいストレス対処法や心理学的なアプローチを学びたい場合は、私のコースがおすすめです。コース内では、ストレスを可視化するチェックシートや、あなたに合ったストレスコーピング法を紹介しています。
コース受講者限定の特典として、ストレスチェックシートやセルフケアワークシートも用意していますので、ぜひご覧ください。グッと我慢をしたり、体の声を無視したりするのではなく、積極的にケアをし、ストレス軽減してきましょう。
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