会話中にシーンとしてしまい、「怖い」「気まずい」と感じていませんか?ひょっとしたらその沈黙、怖がらなくてもいいかもしれませんよ。なぜなら沈黙には拒否以外の意味もあるからです。
この記事では、起業7年目のカウンセラーで心理本を出版し、カウンセラー養成スクールを運営している田倉怜美が「沈黙の4つの意味と対処法」をお伝えします。
沈黙時のサインを読み取って対処ができるようになることで、どっしり構えて相談に乗れるようになりますよ。
なぜ黙る?沈黙の4つの意味
そもそもなぜ急に黙るのでしょうか?「話したくない」のサインでしょうか?それとも別に意味があるのでしょうか?
実は、沈黙には4つの意味合いがあります。ここでは、「心理学的な沈黙の4つの意味」を紹介します。
会話中だけでなく、カウンセリング中に起こりえるシチュエーションも併せて解説しますので、相談業を目指している方や副業カウンセラーなりたての方は参考にしてください。
1.拒否のサイン
まず1つ目の沈黙の意味が「拒否のサイン」です。
会話中に押し黙られて、気まずさや不安を感じるのは、沈黙の代表的な意味合いに「拒否」があるからです。
・この話題に触れてほしくない
・話したくない
・回答したくない など
会話している相手が「話したくない」と感じたときに、その会話に深入りされるのを何度も防ぐために、口ごもったり、黙ったりします。
親しい相手であっても、詳しいお仕事の話題や健康上の問題に触れてほしくないことと感じることもあるでしょう。
カウンセリング中にこれが起こるのは、おもに次の2つのケースです。
ラポール(信頼関係)が十分に築けていない
1つ目が「ラポール(信頼関係)が十分に築けていないのに突っ込んだ質問をした」ときです。
初回カウンセリングやさいしょのうちは、0から信頼を構築します。「早く解決してほしいから」と突っ込みすぎる質問は、拒否されてしまうかもしれません。
未完了の悩みで、まだ向き合う覚悟ができていない
2つ目は「未完了の悩みでまだ課題と向き合う覚悟ができていない」ときです。
失恋の傷を取り除きたいと相談に来たとしても、その方の中では「まだ愛すべき人」であって、別れを受け入れられていないこともあります。
それなのに、現実を直視させようとすると、見たくない現実から逃れようと反論したり、「どうせわかってくれるはずがない」と黙って拒否したり、などの行動につながります。
2.回答に迷っているサイン
つづいて2つ目の沈黙の意味が「回答に迷っているサイン」です。
あなたも「ふだんは何をしているんですか?」などのざっくり過ぎる質問を受けて、「さて、どう返答しようか?」と迷った経験はありませんか?
・何を訊かかれているのかがわからない
・質問の意図がつかめない
・どう答えたらいいかわからない など
聴き方が悪かったり、抽象度が高すぎたりすると、相手も答え方に迷って「黙る」という選択肢をとることがあるからです。
カウンセリング中にこれが起こるのは、おもに次の2つのケースです。
「間違えたくない」真面目さの表れ
まず1つ目が「間違えたくないから」です。「変な回答をしたくない」というまじめさや勤勉さと言い換えることもできるかもしれません。
あるいは、見栄やプライドが触発されて、「変な回答をするくらいなら答えない」を選択するケースもあることでしょう。
自己肯定感の低さから「間違えるのが怖い」
2つ目が「間違えるのが怖い」からです。
人によっては自己肯定感が低く、「もし質問の意図とちがうのを答えたら馬鹿にされるかも」と不安になり、答えられないこともあります。
特にカウンセリングには、悩みを抱えている方がお越しになります。一時的に自信を喪失していたり、育ってきた環境から自己肯定感が著しく低かったりするケースも珍しくありません。
迷っていて答えられないようなら、やさしく手を差し伸べましょう。
3.じっくり考え中のサイン
つづいて3つ目の沈黙の意味が「じっくり考え中のサイン」です。
・じっくり考えたい
・自分と向き合いたい
・課題について初めて考える など
自分自身や悩みと向き合いたいときなどに、「沈黙」することもしばしばあります。
たとえば、何気なく習慣でやっている行動に対して、「なぜやっているの?」と訊かれると、「はて、私はなぜそれをしているのだろう?」「面倒だってやらなくていいのに、やる理由とは?」と考え始め、会話で間が空くこともあるでしょう。
カウンセリング中にこれが起こるのは、おもに次のケースです。
「自分と向き合いたい」自己対話の時間
じっくり考えたいからという理由で沈黙するのは、「自分と向き合いたい」「課題を見つめたい」からです。とても前向きかつ建設的な沈黙といえることでしょう。
けれど、カウンセラーなりたてのころだと、急に黙られると「怖い」「不安」と感じるかもしれません。
実際に、習い始めたばかりのスクール生は「シーンとしてしまった、聴き方が悪かったかな」「沈黙が気まずい、どうすべきだったのでしょうか?」と反省し始めたり、講師に質問して来たり、不安を覚えます。
慣れないうちは、怖いかもしれません。けれども、この沈黙は「はたして自分はどうしていきたいのか?」「自分にとっての幸せの形とは?」と、相談者自身で答えを出し、納得できる答えを選択していくための大事な時間。
一種の「自己対話の時間」ともいえるかもしれません。
一般的にプロカウンセラーになるためには、5分程度の沈黙に耐えられるよう、トレーニングを積みます。慌てずに接することができるようにしましょう。
4.通信トラブルのサイン
さいごの4つ目の沈黙の意味が「通信トラブルのサイン」です。
最近では、ZOOMやTEAMSなどを使い、オンライン上で会話をする機会も増えています。すると、通信トラブル等で、いきなり画面がフリーズしてしまい、会話が途切れてしまうこともあります。
オンラインでのカウンセリング中は、「通信トラブル」の線も考えておいた方が良いでしょう。
(オンラインでのカウンセリング?と思った方は「副業で相談に乗るには?在宅できる5つのカウンセリング方法」に詳しく書かれています)
沈黙の答えとは?黙る意図を見分ける方法
4つの沈黙の意味を理解したら、次は「どうやって見分けるのか?」です。
意味を知っていても、解釈を誤れば会話がぎくしゃくしてしまうかもしれません。正しくサポートできるように、見分ける方法を学習しましょう。
1.拒否のサイン「クロス」と「顔のこわばり」
まず、拒否のサインの見分け方についてです。おもに2つあります。
1つは「腕組」「足組」などのクロスのポーズです。一般的に心理学では、腕や足をクロスさせるのは「拒否」のポーズだといわれています。
もう1つは「顔のこわばりや怪訝な表情」です。押し黙った後に、表情に注目してください。顔のこわばりや怪訝な表情をしていませんか?あるいは、怖い顔をし、敵対するような視線を出すこともあるでしょう。
いきなり会話が途絶え、腕組や足組を始め、硬い表情になったのなら、その沈黙は「拒否」の可能性が濃いでしょう。けれど、実際のカウンセリングでは拒否のサインは案外少ないです。
2.回答に迷っているサイン「目線が泳ぐ」
つづいて、回答に困っているサインの見分け方です。おもに2つあります。
1つは、「目線が泳ぐ」ときです。迷っているときには、目線が一定ではなく、動いていることが多いです。
もう1つは、「聴きたそうなそぶり」です。「どんな意図なのか?」と訊きたいけれど訊きづらいときに、口を半開きにしたり、困って助けを求めるような視線を送ってきたりします。そのようなサインを見受けられたら、すぐに対処をしてあげてくださいね。
3.考え中のサイン「どこか1点を見つめる」
まず、考え中のサインの見分け方についてです。おもに2つあります。
1つは「目をつぶる」もしくは「どこか1点を見つめる」です。じっくり考えたいときには目をつぶって考えたり、どこか視線が1点に固定されたりすることが多いです。
もう1つは「『ん~』といったあとに押し黙ったとき」です。考えても見なかったことや初めて考える内容だったりすると、唸ってから思考にふけり、黙る人もいます。
4.通信トラブルのサイン「不自然な停止」
さいごに、通信トラブルのサインの見分け方についてです。おもに2つあります。
1つは、「不自然な停止」です。いきなり動きが止まったら、表情や声が途切れたりしたりなどは、典型的な通信トラブルのサインになります。
もう1つは「不調の前兆が見られるとき」です。ときどき会話に時間差が生じたり、動きが止まって見えたりなど、通信環境が不安定かもしれないと思える前兆がある場合には、何らかのきっかけでのちに通信が途切れることもあります。
もう沈黙は怖くない!心理学をもとにした効果的な対処方法
沈黙の意味やサインを知ったら、意味ごとに対処できるようになりましょう。
ここでは、心理学をもとにした「効果的な対処方法」を沈黙の意味ごとに紹介します。
拒否①の場合「的確な伝え返しをする」
沈黙が拒否だった場合の対処方法は、2つあります。1つが「的確な伝え返しをすること」です。
ぜひ考えてほしいことがあります。それが「相手のことを信頼できていないのに、深い話をすることができるのか」についてです。
たとえば、会ってまもないのに、いきなり年収や持病の有無などを聞かれたら、あなたは答えますか?きっと誰だって答えたくないことでしょう。
恋愛でも、カウンセリングでも、「信頼」をきちんと築かないことには、深い話をすることができません。しっかりと「信頼」を築くことが肝心なのです。
信頼を得るために、的確な伝え返しをしましょう。とんちんかんな受け答えが続いたり、あまりにも機械的だったりすると、拒否されてしまうかもしれません。
特にカウンセリングにおいては、初対面の時に相談者も緊張します。相談者は「話して平気かな?」「変に思われないかな?」と、判断に迷いつつ、話し始めることもよくあります。
「話していて心地いいな」「この人になら話したい」と思えるように「信頼」を貯めていきましょう。
具体的にはカウンセラー養成講座で学ぶ3つの伝え返し方や基本的な5つの技法などを使います。(カウンセリング養成講座の詳細はこちら)
拒否②の場合「速やかに話題を変える(未完了のテーマ、地雷)」
沈黙が拒否のサインだった場合の対処方法の2つ目は「速やかに話題を変える」です。
とくに「恋愛」や「夫婦関係」、「親子関係」などの人間関係系のテーマのときに多いのですが、すでに過ぎ去った出来事であっても、相談者にとってはまだ「渦中」であることもあります。
たとえば、相談者は10年付き合ったけれど、両親に認められず、1年前に破局した女性とします。すでに恋愛関係が終了しています。
けれども、彼女の中では「完結」しておらず、「私がもっと○○していれば」「○○しなければ」と後悔しているケースもあるでしょう。
未完了の話題をテーマとして出したときに、強い拒否反応が出る人もいます。「深入りしたくない」「まだ向き合えない」状態ならば、まだそのタイミングではありません。
カウンセラーとしては寄り添いたいかもしれませんが、ムリに推し進めるのが正解ではないこともあるのです。その場合には、速やかに別の話題へと変えましょう。
迷っている場合「別の聴き方をする」
沈黙が迷っているサインだった場合の対処方法は「別の聴き方をする」です。質問の意図がわかりにくいようなら、より具体的な質問をするか、別の角度から質問を投げかけます。
たとえば、「ふだんは何をしていますか?」と訊いて相手が押し黙ったら、あなたはどう言い換えしますか?
「休日の過ごしかたを教えてもらえますか?」や「どのようなお仕事をしていますか?」など、具体的な質問にすることができるでしょう。
あるいは、両親との関係に悩んでいる相談者が相手で「親を恨んでいるんですか?」と直接過ぎる質問で、「はい」と答えていいものか迷っているようなら、どう言い換えできるでしょうか?
「親に対して、ちょっとなぁ、と思うことはありますか?」「それだけ○○があったら、不満も貯まりそうだと感じたのですが、その辺りはいかがですか?」などの言い換えができます。
オブラートな聴き方にすることで、たとえ「はい、と答えても人間性的に問題ないだろう」と思えるように、配慮して質問してあげるのも大事です。
考え中①の場合「答えが出るまで待つ」
沈黙が考え中のサインだった場合の対処方法は2つあります。1つ目は「答えが出るまで待つ」です。
カウンセラーなりたての方なら、話が途切れたようで気まずいと感じたり、相談者が黙ると不安になったりするかもしれませんね。考えているサインだと言い聞かせても、内心はソワソワすることでしょう。
けれども、それはあなただけではありません。私も今ではカウンセラー歴11年になり、落ち着いて対処できますが、さいしょの1年目・2年目は内心ドキドキで「どうしよう!?」「聴き方が悪かったのかな?」と不安いっぱいでしたよ。
経験を重ねるごとに、落ち着いて待てるようになります。カウンセリングの場数をこなし、3分、5分と待てる器へと育てていきましょう。
考え中②の場合「第2のアプローチをする」
沈黙が考え中のサインだった場合の対処方法の2つ目は「第2のアプローチをする」です。
基本的にカウンセラーは、相談者が考えているときに待つのがスタンダードです。けれども、あまりにも長い時間考えていたり、苦しそうだったりするのなら、このアプローチ方法が有効です。
とくに「今日はどのようなご相談でしょうか?」との質問で、困惑しているようなら、「何がしたいかわからない」「ゴールや人生の目的がわからないから相談に来た」というケースかもしれません。
実際に700名以上相談に乗る中で、「漠然ともやっとしているから来た」「よくわからないから来た」という方もいらっしゃいました。
そうなると「どうしたい?」と質問しても堂々巡りになったり、うまく答えられずにシーンとしたり、カウンセリングが進まなくなります。
そのようなとき、私は第2のアプローチをします。
カウンセリングは必ずしも「聴く」だけではありません。色や絵画を手掛かりに深層心理を見ていくなんていうアプローチ法もあります。
実際に、統合失調症でうまく言葉が発せられない方が相談に来た際には「色彩療法」を用いたこともありました。
思考が整理できず、別の聴き方をしても「わからない」「答えられない」と答えていたところ、ダイレクトに潜在意識に介入できる第2のアプローチ方法を使うことで、「これがしたくない」「これがしたい」などの方向性が見えてきました。
また、パートナーシップで悩んでいたある男性は、課題があるのはわかりつつも何が原因かが見えずに八方ふさがりのようでした。そこでこのアプローチをしたところ、「自分の価値観」が可視化できて、パートナーとの相違点が見えてきたのです。
違いが分かることで「衝突」や「喧嘩」になる原因に気づくことができます。その男性は「○○します」とはつらつとした表情で帰っていきました。
このように会話以外の「潜在意識に働きかける第2のアプローチ」によって会話を促したり、本当の気持ちややりたいことを思い出したり、意思決定に役立ててもらうこともできます。
第2のアプローチ方法について興味がある方はこちらからご確認いただけます。
通信トラブルの場合「すぐにサポート」
沈黙が通信トラブルと疑われる場合の対処方法は「すぐにサポート」です。
・「聞こえますか?」と尋ねる
・聞こえるようなら「同じURL」から入りなおしてもらう
・聞こえないようなら電話もしくはメールで案内する
・別環境から入りなおしてもらう など
なるべく迅速にフォローしましょう。特に年齢層が高い方の場合、ZOOMなどに使い慣れておらず、パニックになっているかもしれません。
可能なら、場面構成の時点で「通信トラブルの際のご案内」を済ませておくのをおすすめします。いざ通信トラブルが起こっても、お互いに冷静な対応がとれますよ。
沈黙は気まずくはない。怖がらずに冷静に対処しよう
いかがでしょうか。今回は「沈黙が気まずくない!4つの意味と効果的な対処法」として、
- 拒否のサイン
- 回答に迷っているサイン
- じっくり考え中のサイン
- 通信トラブルのサイン
などについてお伝えしました。
カウンセラーなりたてのころは、シーンと沈黙すると「聴いちゃいけないこと質問しちゃった?」「拒否されている?」と不安になるかもしれません。
けれども、実際には長考していたり、回答に迷っているだけのことも多いのです。ぜひとも4つの意味と見分け方を知り、冷静に対処方法をとりましょう。
もし信頼関係づくりに苦戦していたり、表面的な聴き方しかできていないと感じていたりするのなら、信頼を得るためのカウンセリング技法をマスターすることで悩みが解決につながるかもしれません。
「プロとして相談に乗っていきたい」「副業カウンセラーとして悩んでいる方の力にもっとなりたい」方は、基本的な傾聴法やプロ講師によるロープレのフィードバックなどを講座で受けることも可能です。
まずは体験セミナーで相性をお確かめになってはいかがでしょうか?
沈黙になったときに相手を責めるのではなく、自分の落ち度を考えられる心やさしいあなたの素質が、活かされていきますように。
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